仙台名物「せり」の根っこが絶品!美味しい洗い方とラーメンに合う理由
「せり」と聞いて、春の七草の一つとしてのイメージしかない人は、ぜひこの記事を読んでほしいと思います。仙台でのせりは、もはや冬の主役です。
せりの生産量全国一を誇る宮城県。中でも仙台市に隣接する名取市が一大産地で、きれいな水で丁寧に育てられた「仙台せり」は葉・茎・根のすべてを食べられる品質の高さが自慢です。名取でのせり栽培の歴史は元和年間(1620年頃)にまでさかのぼり、400年以上にわたって地元の食卓を支えてきました。仙台の正月の雑煮にも欠かせない食材であり、「せり=冬の仙台」という図式は地元民にとって当たり前の感覚です。近年は「せり鍋」がSNSや全国放送で取り上げられ、観光客からも熱い注目を集めています。
せりを食べたことがある人でも、根っこまで食べたことがある人は意外と少ないかもしれません。でも、仙台ではこの根っこが最大のご馳走です。
根の部分は、冬の寒さの中でデンプンが糖に変わることで甘みが増し、同時に精油成分が凝縮されるため香りがもっとも強くなります。食感はシャキシャキを超えた「ジャキジャキ」とも表現されるほどの歯応えで、噛むたびに独特の清涼感が広がります。根菜のような甘みとほろ苦さ、そして清涼感——この三つが重なるのは、せりの根っこにしかない体験です。名取産のせりは茎・根ともに太く、根付きで出荷できる品質の高さが他産地との大きな差別化になっています。
せりの根っこを美味しく食べるための最大のハードルは、泥落としです。細かく絡み合った根の間に泥が詰まっているため、軽く流水で洗うだけでは不十分。ここを手抜きすると土臭さが残り、せっかくの香りが台無しになります。名取のせり農家さんが実践する洗い方を参考に、丁寧な下処理を身につけましょう。
根っこを軽くほぐしながら、手でつかめる大きな泥を取り除きます。細い茶色い根がある場合はこの段階で除去します。
根元だけを水に浸けて泥をふやかします。浮いてきた泥をそのまま流水で流すと、次の工程がぐっと楽になります。
これが農家さん直伝の核心です。竹串や爪楊枝でもOKですが、歯ブラシが最も効率的。流水を当てながら根と根の間をかき出すようにこすります。根元を半分に割ってから洗うと内側の泥まで落とせます。
新しい水でボウルを満たし、茎・葉もやさしくふり洗いします。葉は傷みやすいのでこすらず振る程度に。最後に流水でしっかりすすぎます。
せりがラーメンに合う理由は、香りの化学にあります。せり特有の精油成分は脂肪との親和性が高く、動物系スープの鶏油・豚脂と合わさることで香りが一気に開きます。鍋に入れた瞬間に立ち上がる清涼感ある香りは、こってりしたスープをすっきりさせる役割を果たします。また、根っこのジャキジャキした食感は、麺を食べているときの箸休めにもなり、一杯の中にリズムと変化をもたらします。
自家製麺キリンジでは、せりを使った一杯において葉・茎・根をそれぞれ異なるタイミングで加える工夫をしています。根は少し早めにスープで温め、茎は仕上げの直前、葉は丼に盛ってから——それぞれの食感と香りが重なることで、一杯の中に「せりの全部」が詰まります。
キリンジのせりラーメンに欠かせないもう一つの地元食材が、社会福祉法人はらから福祉会が製造する「はらから豆腐」です。宮城県産大豆「ミヤギシロメ」100%と塩田にがり、蔵王の雪解け伏流水だけで作られた木綿豆腐は、全国豆腐品評会・東北大会でダブル金賞を受賞した実力派。「マツコの知らない世界」でも取り上げられ、今や全国にファンを持ちます。
800gというどっしりとした大きさと大豆の濃い風味・しっかりした食感が特徴で、せりの清涼感ある香りとの相性は抜群です。鶏ベースのスープの中で、せりの根っことはらから豆腐が並ぶ一杯は、仙台の地産地消をまるごと体感できる組み合わせ。食べることが誰かの社会参加を支えているという事実も、この豆腐を選ぶ理由のひとつです。
仙台せりの旬は秋〜冬、9月から翌3月ごろまでの「根せり」の季節がベストです。寒さが深まるほど根の甘みと香りが増し、1月〜2月の厳冬期がもっとも美味しい時期とされています。宮城県は新品種「Re14-4」の普及も進めており、茎・根がより太く食感のよいせりが今後さらに広まっていきます。
家庭でも少し手間をかけて根っこまで丁寧に洗えば、葉・茎・根それぞれが異なる表情を見せてくれます。鍋はもちろん、根だけを天ぷらやきんぴらにするのも絶品です。次にせりを手にとったら、ぜひ根っこまで味わい尽くしてみてください。お店でも、ご家庭でも——「せりの根っこ」を知っているかどうかで、仙台の冬の楽しみ方がまるで変わります。

コメント