
まず構成を読み込んで、キリンジらしい熱量で書きます。—
自家製麺のメリットとは?ラーメンの「加水率」と食感の秘密をプロが解説
はじめに:自家製麺とは何か?
毎朝、厨房に入って真っ先にすることがある。麺を打つことだ。
小麦粉を計量し、水を合わせ、こね、延ばし、切る。この一連の作業は正直、体力もいるし時間もかかる。仕込みが多い日は、他の作業を圧迫することだってある。それでも自家製麺をやめない理由が、ちゃんとある。
工場で大量生産された乾麺や冷凍麺には出せない「打ちたての香り」がある。粉の風味がダイレクトに感じられ、その日のスープに合わせて配合や厚さを微調整できる。自家製麺は、スープと麺が初めて「会う」瞬間まで、ずっと生きている。そのダイナミズムこそが、自家製麺最大の魅力だと思っている。
ラーメンの食感を決める「加水率」の魔法
ラーメンの麺を語るとき、避けて通れないのが「加水率」という言葉だ。
加水率とは、小麦粉の重さに対して加える水分の割合のこと。たとえば小麦粉100gに対して35gの水を使えば「加水率35%」となる。この数字がたった数%変わるだけで、麺の食感はまるで別物になる。
低加水麺の特徴(パツパツ食感)
加水率がおよそ30〜34%前後の麺を「低加水麺」と呼ぶ。水分が少ない分、麺は硬くしまり、独特のパツパツとした歯切れが生まれる。
この麺の最大の特性は「スープ吸収力の高さ」だ。水分が少ない麺は、スープをぐんぐん吸い込む。どんぶりに入れた瞬間から麺はスープと一体化していく。だから「のびが早い」とも言われるが、裏を返せば「最初の一口に命が宿る」麺とも言える。博多の細ストレート麺がその代表格だ。
多加水麺の特徴(モチモチ食感)
加水率が38〜45%を超えてくると「多加水麺」の領域に入る。水分をたっぷり含んだ麺は、ムチムチとした弾力とツルツルの喉越しが特徴だ。
スープを吸いにくい分、麺そのものの風味を長く楽しめる。札幌味噌ラーメンのちぢれ太麺や、喜多方のうねり麺などがこの系統に属する。スープを「からめる」より「まとう」イメージで、麺とスープの関係性がまた異なる。
キリンジが考える「最高の麺」とは
自家製麺キリンジでは、複数の国産小麦をブレンドして使用している。粉の選定にあたって最も重視しているのは「香り」と「甘み」だ。
目指す食感は、低加水のパツパツでも、多加水のモチモチでもない。その中間域でありながら、どちらの良さも持っている麺だ。スープをほどよく吸いながらも、麺本来の風味を失わない。歯を入れたときの最初の抵抗感、そして奥歯で感じる小麦の甘さ——そこにこだわり続けている。
毎日打つからこそ、湿度や気温に応じてその日の加水率を微調整できる。これが自家製麺の本当の強みだ。
まとめ:麺の違いを知ればラーメンはもっと美味しい
次にラーメンを食べるとき、ぜひ麺に意識を向けてみてほしい。
スープだけでなく、「この麺はパツパツだな」「よくスープを吸っているな」と感じるだけで、一杯のラーメンの奥行きがぐっと広がる。食感の違いは、作り手の哲学の違いでもある。
自家製麺キリンジの麺を食べたとき、その背景にある毎朝の仕込みと、小麦への敬意が少しでも伝わればうれしい。

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