2006年、宮城県に「自家製麺キリンジ」は誕生した。
当時のラーメン業界は、強いトレンドが台頭し、専門性と個性が求められる時代に入りつつあった。そうした中で自家製麺キリンジは、「麺を自分で作る」という原点に立ち返り、店名の通り“自家製麺”を軸にしたラーメン店としてスタートした。
開業当初から一貫しているのは、麺・スープ・具材のすべてを「現場で考え、現場で作る」という姿勢である。ラーメンは単なる外食メニューではなく、素材と技術の組み合わせによって成立する料理であり、日々の積み重ねによってしか完成度は上がらない。そうした考えのもと、自家製麺キリンジでは麺の配合や加水率、熟成時間を細かく調整しながら、自店のスープに最も合う麺を追求してきた。
ラーメン店において「麺」は単なる主食材ではなく、店の思想そのものを表す要素でもある。既製品に頼るのではなく、自分たちの手で麺を作ることは、味の自由度を広げると同時に、店の個性を形にする行為でもある。自家製麺キリンジは、この自家製麺という基盤を守りながら、長年にわたって営業を続けてきた。
20年営業を続ける中で、ラーメン業界も大きく変化してきた。SNSの普及、情報の高速化、食材価格の高騰、そしてコロナ禍による外食環境の変化など、飲食店を取り巻く状況は年々厳しさを増している。こうした状況の中で店を維持し続けるためには、単にラーメンを作るだけではなく、「店としてどう生き残るか」という戦略が必要になる。
その中で生まれた代表的なメニューの一つが「あぶらかす」を使ったラーメンである。あぶらかすは牛の小腸を揚げて脂と水分を抜き、旨味を凝縮させた大阪発祥の食材で、もともとは副産物として扱われてきた。しかし、この食材には強い旨味と保存性があり、ラーメンに独自のコクを与える可能性があった。自家製麺キリンジでは、この副産物とも言える食材をラーメンの中心に据え、「カスラーメン」という形でメニュー化した。
これは単なる変わり種メニューではなく、「価値の見直し」という考え方でもある。一般的には主役にならない食材でも、使い方次第で店の個性になる。副産物や脇役の食材を再評価することは、食文化の歴史とも重なる視点であり、自家製麺キリンジのメニュー開発の思想にもつながっている。
また、店舗の活動は店内だけにとどまらない。SNSやブログなどを通じて、ラーメン作りの背景や食材の意味、店の考え方を発信し続けている。ラーメンは一杯の料理であると同時に、その背後には技術、歴史、そして経営の判断が積み重なっている。そうした過程を言語化し共有することも、現代の飲食店にとって重要な活動の一つである。


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