語るに落ちる。20年ラーメン店を続けて分かった共通点

はじめに

飲食店は開業することより、続けることの方が難しい。

これは長年この仕事をしてきて実感していることです。

新しく店を始める人は毎年います。しかし、数年後に同じ場所へ行くと、別の店になっていることも珍しくありません。

私の店も開業から約20年が経ちました。

「20年も続けられた秘訣は何ですか?」

そう聞かれることがありますが、何か特別なことをした覚えはありません。

むしろ、大きな勝負を避け、小さな改善を積み重ねてきた結果が今につながっているのだと思います。

時代は大きく変わった

店を始めた頃は、スマートフォンもSNSも今ほど普及していませんでした。

新しい店を探すなら雑誌や口コミが中心で、ラーメン好きの間で評判が広がるまでには時間がかかりました。

今は違います。

一枚の写真、一つの投稿で全国に情報が広がります。

便利になった一方で、話題になる店も、忘れられる店も早くなりました。

食材も大きく変わりました。

小麦、豚肉、醤油、海苔、ガス、電気。

値上がりしていないものを探す方が難しいくらいです。

昔と同じ感覚で経営していては、利益は残りません。

だからといって、お客様に負担を押し付けるだけでは長く続きません。

経営とは、その間でどう折り合いをつけるかを考える仕事なのだと思います。

変えなかったこと

変わったことが多い一方で、変えなかったこともあります。

それは、自家製麺です。

製麺所から仕入れた方が楽なのでは、と言われることもあります。

確かに、時間だけを考えればその通りです。

朝から小麦粉を練り、生地を寝かせ、製麺し、その日の状態を見ながら微調整する。

決して効率の良い仕事ではありません。

それでも続けている理由は、自分で納得した一杯を出したいからです。

毎日気温も湿度も違います。

同じ分量で作っても、同じ麺にはなりません。

だから毎日少しずつ調整します。

派手ではありませんが、この積み重ねがお客様には伝わると信じています。

あぶらかすも変わらない看板

もう一つ変えてこなかったのが、あぶらかすを使ったラーメンです。

「あぶらかすって何ですか?」

今でも初めて来店される方によく聞かれます。

牛の小腸をじっくり揚げて旨味を凝縮させた大阪の食材ですが、仙台ではまだ珍しい存在です。

流行の商品ではありません。

だからこそ、長く続ける価値があると思っています。

誰もが扱っている食材ではなく、自分の店だからこそ提供できるものを磨き続ける。

その積み重ねが店の個性になります。

新しいことより、続けられること

飲食店は新商品や限定メニューが話題になりやすい世界です。

もちろん、それが合う店もあります。

しかし、私は新しいものを次々に増やすより、「続けられること」を優先してきました。

メニューが増えれば仕込みも増えます。

食材が増えれば在庫管理も複雑になります。

ワンオペで営業している以上、自分の手が届く範囲を超えてしまえば、お客様に迷惑をかけることになります。

だから増やす前に、「本当に続けられるか」を考えます。

続かない工夫は、一時的に話題になっても店の力にはなりません。

派手な店より、安心できる店

長く営業していると、何度も来店してくださるお客様が増えてきます。

「今日はいつものラーメンを。」

そんな一言が、とてもありがたく感じます。

常連のお客様は、新しい商品を期待して来るわけではありません。

「今日も変わらない一杯が食べられる。」

その安心感を求めて来店してくださいます。

味だけではありません。

店が清潔であること。

接客が落ち着いていること。

営業時間が安定していること。

そうした当たり前の積み重ねが信頼になります。

長く続く店には共通点がある

全国には何十年も営業を続けている飲食店があります。

業態は違っても、共通していることがあります。

無理をしないことです。

流行を追いかけ過ぎない。

借金を増やし過ぎない。

自分たちができる範囲を知っている。

そして、お客様に対して誠実であること。

特別な経営理論ではありません。

毎日の営業を大切にする姿勢です。

おわりに

約20年営業してきて思うのは、「長く続く店」は特別な店ではないということです。

一日だけ繁盛する店より、十年後も変わらず暖簾を出している店の方が難しい。

そのためには、派手な挑戦より、小さな改善を続けることが大切です。

自家製麺も、あぶらかすも、毎日の仕込みも、その積み重ねの一つです。

お客様に「また来よう」と思っていただける一杯を、明日も変わらず作る。

結局のところ、それが長く愛される店への一番確かな近道なのだと思っています。

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