結論
店を小さく始めるのは正しいが、開業はゴールではない。店は完成した瞬間から壊れ始める。20年ラーメン屋をやって分かったのは、開業後の修繕装備も店の寿命を左右するということだ。

「広い店」が失敗する理由
飲食店を開くとき、最も陥りやすい失敗が「立派な店を作ろうとして客席を広くしすぎること」だ。個人的な見解だが、理由は三つある。
一つ目。そもそも客数はやってみないと分からない。
二つ目。そもそも限界がある。席数を増やすより、少人数に質の高いサービスを集中させた方が、結果的にファンが増える。
三つ目。店が広いと、出ていく金もデカい。金を産まないスペースにまで不効率な改装費がかかる。いい時も悪い時もあるが、借入して失敗したら、まあ想像つくだろう。
だが、店は開業した日から壊れ始める


ここから先は、記事にはあまり書かれていない話をする。
うちは20年、ラーメン屋を続けてきた。その間に壊れたものを挙げる。
- 椅子のガタガタ
- テーブルのグラつき
- スチール棚のグラつき
- トイレのドアの空回り(お客さん閉じ込め)
- トイレの詰まり
- 排水溝の詰まり
- 扉のグラつき
- 水道蛇口の破損
特別なトラブルではない。飲食店を続ければ、必ず起きる。トラブルは日常だ。
DIYで開業資金を抑える話は多い。だが、開業してからの話をする記事は少ない。現実には、開業より修繕の方が緊急性が高い。
トイレが詰まれば、その日の営業が止まる。蛇口が壊れれば、水が使えない。厨房が止まれば、客を返すしかない。壊れた瞬間にすぐ直せるかどうかが、営業を続けられるかを決める。瞬時にだ。
小さく始めるからこそ、修繕装備が要る

安く始めた店は、既存の居抜き設備をそのまま流用していることが多い。それは悪いことではない。ただし、古い設備は新品より先に壊れる。
つまり、DIYで小さく始めた店ほど、開業直後から修繕の頻度が高くなる可能性がある。
だからこそ、開業前の段階で、最低限の修繕装備を揃えておくべきだと考えている。
- ドライバーとレンチのセット(椅子・テーブル・棚のグラつきは大半がネジの緩みで直る)
- ラバーカップとワイヤーブラシ(トイレ・排水溝の詰まりは業者を呼ぶ前に自分で対応できることが多い)
- モンキーレンチとシールテープ(水道蛇口の水漏れ・破損の応急処置に使う)
- スペアの蝶番とドアクローザー(扉・トイレのドアの空回りはこれで直せる場合がある)
全てを自分で直せというわけではない。ただ、応急処置ができるかどうかで、営業を止める時間が大きく変わる。業者を呼ぶまでの数時間、店を開け続けられるかどうかの差になる。どうにかさせる工具セットを装備する。
判断基準はシンプルだ。ネジの緩み、詰まり、軽い水漏れは自分で対応する。配管の奥や電気系統に関わるものは、無理せず業者を呼ぶ。この線引きを、開業前に決めておくと迷わない。
ある日の排水溝と、常連客に教わったこと
具体的な話をする。開業から数年経った頃、営業中に排水溝が完全に詰まった。ランチのピーク時間だった。水が引かない。厨房が使えない。客を待たせるしかなかった。
その日、常連の一人が「ワイヤー、もしくは安いハンガー貸して」と言って、自分で直してくれた。工事関係の仕事をしている人だった。10分で直った。業者を呼んでいたら、その日の営業は終わっていた。

この経験から学んだのは、修繕は特別な技術ではなく、道具と経験があれば誰でもできる作業が多いということだ。だからうちでは、修繕道具一式を厨房の決まった場所に置くことを決めた。外に頼らず、自分で直せる部分は自分で直す。それが、20年続けてこられた理由の一つだと思っている。
まとめ
小さく始めれば、低リスク・低コストで開業できる。それは事実だ。だが、開業した瞬間から、店は物理的に壊れ始める。椅子、テーブル、棚、ドア、トイレ、排水溝、蛇口。20年やって、これらすべてが壊れた。DIYで浮いた開業資金の一部は、修繕装備に回しておくべき。完璧な店を作るより、壊れた時にすぐ直せる店を作る方が、結果的に長く続く店になるはずだ。

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