暇な待ち時間に、何かひとつくらい楽しんでもらえないか。そう考えて作ったのが「あぶらかすキャッチ」というブラウザゲームだった。
単純だが、単純なままでは終わらせなかった
やることは単純で、画面に落ちてくるあぶらかすやラーメンを、指示された方向にスワイプして捌いていくだけ。あぶらかすとラーメンは右、肉は左、スープは上スワイプ、芋煮鍋はスマホを振る。ニンニクと生姜だけは異様に速く落ちてきて、考える間もなくスワイプしないと取り逃す。
ただ、この基本ルールだけでは、すぐに飽きられると分かっていた。だから、五十点ごとにルールを反転させる仕掛けを入れた。右だったはずの操作が急に左になる。慣れた頃に裏切られる感覚を、わざと作っている。コンボが五つ以上続くと、今度は絶対に触ってはいけない罠アイテムが混ざってくる。順調に稼いでいるときほど、気を抜くと事故る。このあたりの意地悪さは、作っていて一番楽しかった部分でもある。
仙台の歴史上の人物が、厄介なキャラとして襲ってくる
落ちてくるアイテムの中には、支倉常長、伊達政宗、松尾芭蕉をモデルにした「ボンビーキャラ」がいる。長押ししてからスワイプで振り払わないと、貯めたポイントを持っていかれる。歴史上の偉人を、ゲームの中では厄介な貧乏神枠として扱っているわけで、罰当たりと言われるかもしれないが、地元の人物をネタにできるのも、この土地でやっている店だからだと思っている。
条件が揃うと「天使の仙台四郎」が降臨する演出もある。仙台四郎は、商売繁盛の縁起物として今も市内の店に肖像が飾られている、実在した人物だ。降臨中の十五秒間だけ、高得点アイテムが取り放題になる。単なるボーナスタイムという以上に、この土地の験担ぎの文化を、ゲームの文法に翻訳してみたつもりでいる。
自分自身を、一番面白おかしく書いた
ゲーム内には株式投資のミニ要素もあり、伊達建設、支倉海事、氏家証券など、実在しない架空企業が七社出てくる。それぞれに株価を動かすニュースを用意していて、その数は百八十本を超える。全部、自分で書いた。
その中に「岡本商事」という会社がある。祖業は地金まがい商法から始まり、ビットコイントレジャリー事業に転換し、宇宙事業やAI事業にまで手を広げて、最後は炎上して上場廃止寸前になる。うちの店主の苗字は岡本だ。つまり、一番滅茶苦茶な会社として、自分自身をモデルにしている。他人をいじるより先に、自分を一番派手にいじっておいた方が、後々角が立たないだろうという判断もあった。
煽ってくる実況・解説も、全部書いた
ミスをするたびに、辛口の実況・解説コメントが流れる仕組みもつけた。「義務教育の敗北です」「反射神経が完全に初老のそれですね」といった、かなり容赦のない言葉を並べている。褒めるときも素直に褒めず、一言皮肉を挟む。優しいだけのゲームにはしたくなかった。プレイヤーを甘やかさない実況を書きながら、実のところ一番言われているのは自分自身なのかもしれないと思うことがある。
一万点の先に、実際の来店がある
一万点に到達すると、店で使える味玉券がもらえる仕組みにしている。ゲームの中だけで完結させず、実際に店に来てもらうところまでをワンセットにしたかった。ボンビーキャラやカードコレクション、ランキング機能まで用意したのも、遊んで終わりではなく、もう一度触りたくなる理由を、ひとつでも多く仕込んでおきたかったからだ。
厨房に立ちながら、こういうものをコツコツ作るのは、正直なところ効率だけを考えれば無駄な時間かもしれない。それでも、味玉券を持って来店してくれた人がいたときは、単純に嬉しかった。
あぶらかすキャッチは、今も無料で公開している。

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