なぜ、店主が書くブログは強いのか。20年ラーメン屋をやって分かった「一次情報」の価値
ブログを書いていると、ふと考えることがあります。
「ネットに載っている情報を整理して記事にする意味はあるのだろうか」と。
店の住所、営業時間、メニュー、アクセス方法。ラーメン屋の情報なんて、ネットで検索すれば大抵のことは分かります。それならわざわざ店主が時間をかけて文章を書く必要もないのかもしれません。
ですが、2006年から仙台でラーメン店を続けてきて、少し考え方が変わりました。
ネットで調べれば分かる情報と、実際に現場に立っている人間にしか分からない情報は、全くの別物です。これはラーメン屋に限らず、個人でブログを書いている人全員に言えることだと思います。
1. 検索しても出てこない「現場の手触り」を書く
私の店では「あぶらかす」という食材を使っています。牛の小腸から脂と水分を抜き、旨味を凝縮させたものです。
「あぶらかすとは何か」という説明だけなら、検索すれば誰でも書けます。しかし、そんな辞書みたいな説明を自分のブログに載せても、あまり意味はありません。
実際に店で使っていると、検索には引っかからない問題がいくつも出てきます。
どのくらい入れるとスープの味がどう変わるか
どんな火加減や調理方法が合うのか
どう保存すれば傷まず、無駄が出ないのか
こういう「実際に扱ってみて初めて分かったこと」こそが、記事の読み応えになります。失敗した話も含めて、自分の現場で起きたことをそのまま書く。それだけで記事の伝わり方はガラリと変わります。
2. 正論よりも「現場でどう悪戦苦闘したか」
例えば、原材料の価格が上がったとき。
小麦、油、肉、野菜が値上がりしたら、教科書どおりなら「商品の価格を上げる」のが正解です。
でも、実際の現場はそんなに単純ではありません。お客さんの顔も浮かぶし、仕入れのやりくりも考えなきゃいけない。
私の場合は、ただ値上げを検討するだけでなく「手元にある材料をどこまで使い切れるか」を考えるようになりました。
店から出る野菜くずや卵の殻をコンポストに入れて土を作り、店の裏のスペースで野菜を育ててみる。椎茸の菌床を使ってみる。もちろん、これで原材料費の問題がすべて解決するわけではありません。ですが「買う以外にもやれることがある」と気づけたのは、実際に泥臭く動いたからでした。
ノウハウを綺麗にまとめるより、「自分はこうやって足掻いてみた」「やってみたらこうなった」という生の話を書く方が、読者にとっても親近感や発見があるはずです。
3. 文字数よりも「読んだ人が次に何ができるか」
ブログを書くとき、私は「何文字書こうか」と考えるのをやめました。それよりも「この記事を読んだ人が、読み終わった後に何か一つでも試せるか」を意識しています。
ラーメンの原価について書くときも同じです。
単に「ラーメンの原価率は〇%です」と数字だけ出しても、あまり意味はありません。
なぜその数字になるのか
どの材料にどれくらいお金がかかっているのか
店主として日頃なにを基準に判断しているのか
ここまで書いて、初めて読者にとって役に立つ情報になります。「読者が知りたいこと」と「自分が実際に経験したこと」が重なる場所を探す。これが個人で書く文章の強みです。
4. 失敗談や「やめた話」は役に立つ
店を長くやっていると、うまくいかなかったことのほうが多いくらいです。売れると思って出したのにさっぱりだったメニューもあれば、途中で断念した取り組みもあります。
以前、店でセリラーメンをやっていたことがあります。
ですが、仕入れの安定性や価格、厨房での負担などを総合的に考えて、最終的に「やめる」という判断をしました。
一度始めたことをやめるのは、すごく勇気がいります。せっかく考えたメニューだし、楽しみにしてくれるお客さんにも申し訳ない。それでも、店を長く続けていくためには諦める決断も必要になります。
ブログも同じだと思うんです。
あまり読まれていない記事をずっと残しておくより、内容を見直したり、古くなった情報を書き直したり、時には削除して整理する。書いて終わりではなく、営業しながら少しずつ手直ししていく感覚です。嘘はバレます。
5. 記事の材料は、毎日の仕事の中に落ちている
長く書いていると「今日は何を書こう」とネタに困る日もあります。ですが、店をやっていると、実は日常のあちこちに記事の種が転がっています。
スープの仕込みで気づいたこと
自家製麺の粉選びで迷ったこと
季節による加水率の調整
お客さんから聞かれたちょっとした質問
厨房の設備が壊れて直した話
「自家製麺の作り方」を一般論として説明するのではなく、「今週、麺を打っていて困ったこと」「季節が変わって調整したこと」を書く。それならネタ切れになることもありません。自分の仕事そのものが、そのまま記事の材料になるからです。
6. AIを使っても、最後に残るのは「自分の体験」だけ
最近はAIを使って文章を整理することも増えました。構成を考えてもらったり、昔書いた記事の要点をまとめたりするのには本当に便利です。参謀のように重宝しています。
ただ、どれだけ便利なツールであっても、AIは「今日の私の厨房で何が起きたか」までは知りません。
AIで全体の流れを整理する
自分の体験や失敗談を落とし込む
自分の言葉になっているか読み返す
この手順で書いています。文章の形を整えるのはデジタルに任せてもいいけれど、記事の核になるのはやっぱり「現場で汗をかいた経験」です。
7. 店もブログも、結局やることは一緒
ラーメン屋もブログも、本質はすごく似ている気がします。
ラーメン屋: なぜ、うちの店に来てくれるのか?
ブログ: なぜ、この記事を読んでくれるのか?
どこにでもあるものを、どこにでもある形で出していたら、わざわざ自分のところを選んでもらう理由がありません。
自分の手で試して、失敗して、改善していく。そのプロセスを残していくことが、店の個性になり、ブログの財産になります。あぶらかすの使い方も、自家製麺の試行錯誤も、裏の小さな畑も、最初からブログネタのために始めたわけではありません。店を続けるために必死でやってきたことです。
まとめ
ブログを書いていると、アクセス数や検索順位などの数字がどうしても気になります。ですが、数字を追いかける前に、一度だけ自分に問いかけてみてください。
「この記事は、自分が書く意味があるだろうか?」
ネットで調べて書けるような内容なら、そこにもう一歩、自分の体験を足してみる。実際にやってみたこと、失敗したこと、現場で考えたことを足してみる。
私自身、2006年からラーメン屋をやってきて、成功ばかりしてきたわけではありません。麺を打ち、仕込みをし、値上がりに頭を悩ませ、店の裏で土をいじる。そんな小さな積み重ねの連続です。
でも、個人で文章を書くなら、その「小さな泥臭い積み重ね」こそが一番の武器になります。綺麗にまとめられた情報より、泥臭い体験談を。基本的にG●ogl●のアンチですので、これからもそのスタンスで書いていこうと思います。
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